tl;dr 3行のまとめ(?)は一番下にあります。
Portal with RTX がSteamでリリースされました。
クリアまでやったんですが、レビューにおすすめしないを書き込んでる人がいっぱいいて、あまりにも的はずれなコメントばかりなのでお気持ちを書きます。
その前に、最低要件はRTX3060なんですがそれ以下でやって重すぎるwとか書き込んでる算数もできない人は近寄らないでほしい。
あと設定をちゃんとしてくれ、自分はRTX2080だが最後まで30FPSで遊べたぞ。
(そもそも無料ゲームに低評価をつけるのが個人的にナンセンスだと思ってるけど)
みんなレイトレーシングを劇的に綺麗(綺麗の定義にもよるが)になる技術だと思ってるが、違うぞ
1. 綺麗とリアルは別物
レイトレーシングは今までのレンダリング方式とは違い、光の情報を一つ一つ計算するので、リアルな光の挙動を簡単に再現することが出来る方式です。
この1つ上の文章に綺麗という単語は出てきていません。
綺麗というのは、個人の主観によるものです。
人によっては、Half-Lifeのようなチープなグラフィックのゲームのほうが綺麗だと感じる人もいるでしょう。
ですが、リアルかどうかというのは個人の主観によるものではなく現実にどれだけ近いかを指す言葉なので、大抵の人間の間で同じ尺度を共有できるでしょう。
ただ、大抵の人はリアルな方が綺麗だと思うと思いますが、これも違います。
「リアル イコール 綺麗」なのだとしたら、実写の映画にCGやVFXを使って大げさに画をいじる必要はなくなります。
2. リアルタイムレイトレーシングはプレイヤーのためのものではなく、アーティストのためのもの
リアルタイムでレイトレーシングが出来る一番のメリットは何だと思いますか?
それは、綺麗な映像を出力することではありません。
自分も、Battlefield V や Cyberpunk 2077 などで、レイトレーシングを有効にして遊んだことがありますが、正直差はほとんど実感していません。
では、一番のメリットは何でしょうか?
それは、ゲームなどを作るアーティストやグラフィックエンジニアが手軽で簡単にリアルな映像を出力できるからです。
今多く使われてるレイトレーシングではないレンダリング方式でも、十分レイトレーシングに近い品質の映像を出力することは可能です。
ただし、これを実現するにはアーティストやグラフィックエンジニアが血反吐を吐くような最適化や調整を何度も長い時間をかけて施しているから出来ることです。
リアルタイムレイトレーシングはその光の挙動をGPUの演算力の暴力でカバーすることで実現しています。
もし、リアルタイムレイトレーシングが普及すれば、ゲームや映像を作る人達の工数を大幅に削除することが出来るでしょう。
今のAAA級のゲームは発売に数年かかっていますが、将来はリアルタイムレイトレーシングのおかげで1年早くリリースできた、なんてことがあるかもしれません。
3. リアルタイムレイトレーシングはまだ実験段階
リアルタイムレイトレーシング自体がまだ実験段階です。
リアルタイムレイトレーシング自体がまだ実験段階です。
大事なことなので3回言いました。
リアルタイムレイトレーシング自体はNVIDIAや他のゲーム会社が数年(下手したら10年以上)かけて行ってる超大規模な全てのゲーマーを巻き込んでいる実験段階なんです。
例えば、レイトレーシングの品質を設定する重要なパラメーターでバウンド数という数値があります。
これの最大バウンド数設定が、今回のPortalなら Highで2 Ultraで4 となっております。
が、この数値は実際のレイトレーシングの品質としてはかなり小さいです。
例えば、BlenderのCycleレンダーでは、これのデフォルトの数値は12となっております。
実際の映画などではもっと多くバウンドさせているでしょう。
このバウンド数、1追加するだけで飛躍的に計算量が増えるので、現状のPortalだとカスタム設定で8を設定できるのですが、それだとRTX4090を4枚SLIしても60FPS出ないと思います。多分。
8すら現実的に設定するのが無理なのに実際の映画級の品質を出すためにはもっと多くの数値にしないといけません。ムリポ。
それに、リアルタイムレイトレーシングが実用段階なら、既にリアルタイムレイトレーシングしかサポートしていない新作のゲームが出ても良いはずです。
ですが、現状は出ていません。
4. Portal with RTX は レイトレーシングの宣伝目的で作られた訳では無い…と思う
NVIDIA はなぜ Portal with RTX を作ったのでしょうか?
そもそも今回この Portal を作ったのは NVIDIA であって、Valve ではありません。
Valve も協力はしたでしょうけど、少なくとも主導権を握ってたのは NVIDIA 側です。
それは、新しい NVIDIA のツールである NVIDIA RTX Remix というツールの宣伝目的で作られました。
このツールは、DirectX 9 以前の古いゲームをRTXに対応させるツールです。
ただし、このツールは ENB のような単純なツールではなく、テクスチャを上書きしたり、質感を再調整したりといったかなり高度なことが出来るかなり大規模なツールです。
このツールをリリースすれば、コミュニティが古いゲームをRTXに対応させてくれ、GPUが売れると NVIDIA は目論んだのでしょう。
その宣伝にピッタリのゲームが Portal だったわけです。
Source Engine という改造しやすいゲームエンジン製で、アセット数が少なく、レイトレーシングが映えやすい平面が多い。 なにより、メジャーで大人気のゲーム。
間違っても、今回の Portal が Source2 製ではないことはこの辺を読めば明らかだったはずなんですが、勝手に期待して勝手に落胆している人も中にはいました。
そんなに好きなゲームならなぜ調べないのか。よくわからないです。
まとめ
現状のリアルタイムレイトレーシングははっきり言って使い物にはあまりなりません。
ですが、数十年単位での将来の超高品質なゲームの糧には確実になっています。
新技術というのは、ある日突然完成するものではないのです。